「愛と幻想のファシズム(上)(下)」村上龍著

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おそらく村上龍さんの著作の中でも、わけのわからなさと人気の無さでは一・ニを争う作品であろう。

著者が経済をめちゃめちゃ勉強したのは分かる、それと、著者の作品群に共通する通低音であるいわゆる“システム”を憎む衝動が強いことも分かる、で、けっきょく分からないというか一般の共感を得にくい点は、表層的には経済関係の記述がナマっぽくカタいことであろうけれど、システムへの攻撃を表現する主題として当時筆者がハマっていたハンティングやサバイバルを用いた点であろう。

そもそも“システム”を憎む理由は、真の快楽を享受することができる人間はごく一部に限られていて、その享受する特権が固定してしまっていて大多数の貧乏人は一生”システム”に抑圧されてしまうことが著者は耐えられないのだと自分は解釈している。

極私的なことを云うなら自分自身はシステムを破壊しちゃろうかという元気なんて無いし、快楽は脳がかってに感じるもので、苦痛さえなければ積極的な快楽はあまり期待していない。財産をあの世に持ってけないのと同様に、快楽もあの世に持っていけないよ。そんな淡白な価値観に支配されてるからこそ村上龍さんの作品に魅力を感じるのかもしれないけど。

システムを破壊する様子をいちばんピュアに描破した(と思う)『コインロッカー・ベイビーズ』は死ぬほど好きだが、経済と狩猟はシステムを破壊する道具としては無茶だったんじゃなかろーか。

(平成2年、講談社文庫)

この記事へのコメント

ピンクフロイド 西山智(さとる)
2004年12月13日 17:58
はじめまして!、、、懐かしい本のお話ですね。あの頃は快楽を追う時代でしたね。個人的には『テニスボーイの憂鬱』が一番好きでした。今は龍さんもたしかハローワークの本出してますよね。、、、システム破壊の衝動のテーマは、僕の好きな音楽Pink Floydにも共通するので、『~ファシズム』も好きでしたが、今となっては読み返しずらい作品ですよね。力作だとは思います。
DRAGON龍
2004年12月14日 21:09
コメントありがとうございます。
あー、“テニスボーイの憂鬱”もかなり好きです。なんか、村上龍さんの若さがハジけてますね。システム破壊なんてテーマもまだ明確ではなくて。もしかして“愛と幻想のファシズム”は上下2巻でもボリュームが足りない所為でテーマが露出し過ぎたのかも。力作、とは哀愁漂う評価哉。努力賞テイストが漂います。
余談、当方のハンドルも龍なのでちょっと混乱しました。この龍はたしかハローワークにしばらく通ってました。

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