「ヒュウガ・ウイルス 五分後の世界II」村上龍著

画像小説世界の設定は前回紹介した「五分後の世界」を引き継いでいる。

その設定は、簡単に説明すると、第二次大戦で日本が国家としてはほぼ滅亡し、残されたわずかな日本人が文字通りの地下国家としてゲリラ的に日本を維持していてその人口は少数精鋭26万人、というもので、荒唐無稽でありながらも、現実の腑抜けた日本に無力感を持つ向きには魅力的な設定である。

しかし、本書にあっては、一作目の「五分後の世界」では謎のベールに包まれた畏怖の対象として扱われていたアンダーグラウンドの日本戦士が、冒頭からバンバン出てきて、ありがたみが薄い薄い。

っていうか作者の筆はもー、最新の科学的知見に拠って全く新しいウィルスとの戦いを描き出すことに執心しており、「五分後の世界」の設定である必要がよくわからない。むむむ、当Weblog運営者は初読のときも今回も後半はめんどくさくなって読み飛ばしたので、必要があるのかもしれん。

解説は細胞学・ウィルス学の専門家である大学教授が書いていて、それによると本書のストーリー自体が最新の学識による免疫システムそのものに沿って組み立てられているそうだ。あまり学識の深みにハマりすぎた小説は、本書のほかにも筒井康隆氏「文学部只野教授」とか山田正紀氏「地球・精神分析」とか、どうも尻の座りが良くない。


(平成10年発行・購入、幻冬舎文庫)

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