「昭和御前試合」清水義範著

画像表題作は“御前試合”なんて古めかしいタイトルで時代小説のフレームを使って現代の風俗を転写するユーモア小説、のはずが、発表されてから30年近く経った今2009年となっては、本作の時事ネタ部分ももはや古めかしく、セピア色の二乗になってしまった作品はじめ、著者清水義範氏の実質的デビュー短編集。

ほとんどネタばれだが、表題作「昭和御前試合」で描かれた10試合のうち、対戦者が明記された5カードを列記してみよう。

(念のためテキストを背景色と同じにします。ドラッグしてお読みください)

第一試合: 三船敏郎 対 北の湖
第二試合: アントニオ猪木 対 姿三四郎
第三試合: 王貞治 対 梶原一騎
第八試合: 過激派 対 百恵組
第九試合: ブルース・リー 対 モハメド・アリ

みごとに一時代前のスターが並んでいてむしろ壮観である。
当記事の筆者もこんなに見事な昭和史モノに発酵しているとは予想外であった。

昭和50年代をリアルタイムでご存知の方であれば、ユーモア小説であるとともに、なんだか懐かしい気分も同時に味わえるかも。

ほか7編をあわせて全8編の短編が収められ、テーストはちょっとSF+ちょっとパロディ+ちょっとギャグ。デビュー作である本書の中に、このあと“国語入試問題必勝法”を頂点とするパスティーシュ(=模倣小説)の名作を連発する著者の特質が見え隠れしてる。長所だけじゃなくって、ちょっと衒学的でスクエアで突き抜けてない感じもしっかり漂ってしまってます。


(平成2年発行・購入、光文社文庫)

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