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zoom RSS 「孤高の人」(上・下)新田次郎著

<<   作成日時 : 2013/02/17 22:42   >>

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画像登山家が本質的に有する固陋で偏頗なメンタリティーを可能な限り一般的に文章化した労作である。

題材にした人物は海外遠征に一度も赴かず三十歳そこそこで亡くなったにもかかわらず、上下巻で千ページ近いボリュームに至ったのは、著者が共感したその人格をいかにしてふだん汗もかかない市井の小太りの読者に伝えるかに心を砕いた結果であろう。

本書のテーマは孤独と山である(そりゃタイトルが「孤高の人」だからそうだよね。)

われわれ一般的な読者はふつうに他人と交流し家族を持ち日々を送っている。またそれが当たり前のことと思っている。
しかるに、本書の主人公は山に殉じ孤独に殉じ、不器用に求める交流もようやく得られた愛する家族も、いずれも破綻への前奏として不吉な旋律を奏でている。
冬山で一歩誤れば命を落とす危険に陥るのと同様に、われわれも微温湯のような付き合いや毎日の家族との会話に、吹雪の痩せ尾根のような注意力と感謝を注がなくてはいけないのである。

・・・なんていう一般的な成熟した社会人のような感想はまったくつまらなくて、

冬山で楽しげな一団に対して主人公が卑屈なまでに取り入ろうとして果たせず、あげくその一団は小屋ごと雪崩で全滅するシーンとか、最後のほうで主人公が所帯を持って人格が変わったように社交的になるくだりとか(それがもう残りページから言って破滅への対照的な前振りだというのが明らかなんである)、孤独が両肩に染み付いている哀愁が自分にも伝わってきて、切なくて切なくてもう読むのがつらかったよ。

ちなみに自分はみょんなことから2年前に登山を始めて、みんな和気あいあいと世間話をしながら歩くんで、正直なところ、違和感を持っているよ。
このWeblogはアウトドアの友達は誰も知らないから大丈夫(^^)

新田次郎さんの山岳小説は、もと気象庁職員の履歴に裏打ちされて情景の描写が厳しく美しいから、それだけでも読書体験として強力である。(○きょうりょく×ごうりき)

この一節を読んでも、北アルプスに行って孤独にまみれてみたいと思う:
とがった槍の穂先に、陽光がぴたりと停止すると、そこから、朝は、順序正しく下界へ向っておりていった。槍は黒くは光らなかった。黒い地色の上に、薄い絹が一枚かぶせられていて、そのなめらかな、薄絹が朝日を受けて輝き出したように見えた。薄絹は、薄もも色に光った。薄紅色といったほうが、より事実に近かったかも知れない。だが、その薄絹はあくまで薄く、黒い穂全体を薄紅色に輝かせるほどの作用をしなかった。黒い穂の上に、わずかに、薄紅色を感じさせるていどのものであった。


(昭和48年発行・平成25年購入、新潮文庫)

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